遺言執行者の報酬や支払いについて遺言で定めておくことができますか?
回答
遺言者が遺言において、遺言執行者の報酬を定めた場合は、その内容に従うとされています。報酬についての定めは、必ず遺言においてしなければなりません。
遺言執行者の報酬を含む遺言執行費用をどの相続財産から支出するのか、具体的に定めておくことも可能です。
文例1
第〇条 遺言執行者に対する報酬は、金○○円とする。
文例2
第〇条 遺言執行者に対する報酬は、遺言執行対象財産の評価額の〇パーセントとする。
文例3
第〇条 遺言執行者に対する報酬は、○○法律事務所の報酬規程によるものとする。
文例4
第〇条 遺言執行費用(遺言執行者の報酬を含む。)は、長男が相続した預貯金より支出するものとする。ただし、この預貯金の残高が遺言執行費用に満たない場合には、次男が相続した預貯金から不足分を支出するものとする。
遺言執行者の報酬を遺言で定める場合
民法において、遺言者が遺言において、遺言執行者の報酬を定めた場合は、その内容に従うとされています。
遺言において、遺言執行者の報酬について、金額や支払い方法等について定めておけば、相続人間や遺言執行者と相続人の間での争いを予防することができるといえます。
文例1は、支払うべき報酬を金額で定めておく場合です。
文例2は、遺産の金額は流動的であることを考慮して、支払うべき報酬を、遺言執行対象財産を基準にした一義的な計算方法で定めておく場合です。
文例3は、遺言執行者に弁護士を指定する場合に、その弁護士事務所の報酬規程に従う旨を定める場合です。
文例4は、遺言執行者の報酬を含む遺言執行費用をどの相続財産から支出するのか、具体的に定めておく場合です。
遺言に遺言執行者の報酬の定めがない場合
遺言執行者と相続人全員および受遺者との協議によって定められる場合は、その金額によることになります。
合意ができない場合は、遺言執行者が家庭裁判所に対し、報酬付与の審判の申立てを行うことになります。
家庭裁判所は、相続財産の状況やその他の事情(管理期間、執行行為の難易度、実現された成果など)を考慮して報酬を定めます。
ただし、この審判に執行力はないため、相続人が支払わない場合は、別に民事訴訟を提起して請求する必要があります。
遺言執行者の報酬の支払
遺言執行者の報酬は、遺言執行者としての事務が終了した後に請求することができます。
遺言執行者の報酬は、遺言執行費用であり、遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担となるとされています。つまり、報酬は相続財産から差し引いて支払われることになります。
具体的な相続人の負担部分は、当該相続人が取得する相続財産の割合に比例案分した額で、かつ取得する相続財産の額を超えない部分に限るとされています。
なお、遺言執行費用は遺留分侵害額を算定する際に遺留分侵害額から控除することは出来ないとされており、遺留分から報酬を支払う必要はありません。
遺言執行費用が相続財産を超える場合は、遺言執行者は相続人に報酬を請求することはできないとされているため、遺言執行者の報酬を遺言に定める場合には、相続財産の額を考慮する必要があります。
遺言執行費用には、遺言執行者の報酬の他、遺言書の検認手続き費用、相続財産の調査費用、相続財産の管理費用、登記手続費用、遺言執行に関連する訴訟の費用等が挙げられます。
当事務所の遺言書作成
当事務所は、多くの遺産分割協議案件を扱い、相続が紛争になった時の対応に多くのノウハウを有しており、このような紛争時の多くのノウハウを活かし、紛争を予防するための遺言作成を得意としています。
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