遺産の範囲について
被相続人が相続開始時に所有していた一切の権利義務は、被相続人の一身に専属するものを除いた全てが相続の対象であり、相続により相続人に承継されます。
相続財産には、権利「積極財産(プラスの財産)」と義務「消極財産(マイナスの財産)」があります。
つまり、預貯金、不動産、有価証券等の他、負債なども相続財産となります。
相続財産は、遺産分割協議をする際の前提となるものです。相続財産の範囲を定めた後に遺産分割協議を開始することができます。
具体的に相続財産はどのようなものか理解しておく必要があります。
相続財産に含まれるもの
♦積極財産(プラスの財産)
1.不動産と不動産貸借権
土地、建物、農地、店舗、借地権、借家権など
2.現金、預貯金
3.有価証券
株式、投資信託、公社債など
4.動産
自動車、貴金属、宝石、骨董品、家財、美術品など
5.その他
電話加入権、損害賠償請求権、著作権、ゴルフ会員権など
♦消極財産(マイナスの財産)
1.負債
借金、住宅ローン、小切手など
2.未払金
所得税、住民税、固定資産税など
3.その他未払金
家賃、原状回復費、光熱費、電話代、医療費、介護費など
4.その他
他人の債務の保証債務、損害賠償債務など
相続財産に含まれないもの
♦一身専属の権利義務
一身に専属していた権利義務とは、その権利義務の性質上、他の人に与えたり貸したりするべきではない、その人のみに専属する権利義務のことです。
一身上の義務には次のようなものがあります。
・使用貸借における借主の地位
・代理権
・身元保証人である地位
・雇用契約における使用者、被用者の地位
・委任契約における当事者の地位
・親権者の地位、年金受給権、生活保護給付受給権など
♦生命保険金・死亡退職金
生命保険において、被相続人が被保険者であり、相続人やその他の人が受取人としていた場合の死亡保険金は、受取人固有の財産であると考えられます。
また、被相続人が会社などで勤務していた場合に、死亡すると会社から支給される死亡退職金についても、受取人固有の財産であると考えられています。
そのため、これらは遺産分割において、原則は相続財産に含まれません。ただし、税制上は相続財産とみなし、相続税課税対象となる場合はありますので注意が必要です。
なお、原則としては相続財産には含まれませんが、特定の相続人が高額の生命保険金等を受け取り、相続財産が他にほとんどないため他の相続人がほとんど何も相続出来ない場合などは、相続人間で著しい不公平が生じることとなります。その際は、生命保険金等を特別受益とみなして相続の対象とするべきであると考えられています。
♦生祭司に関する権利
祭祀を営むための系譜、祭具、墳墓などの先祖をまつるための財産を祭祀財産といいます。
祭祀財産は、基本的は相続人のうち1人が承継します。承継する相続人を祭祀承継者といいます。祭祀承継は遺言などにより指定されている場合は、その指定された相続人が承継し、指定がない場合は慣習などによって決まります。
遺言や慣習が明らかでない場合は、家庭裁判所において調停や審判により指定されます。
相続財産の範囲がわからない、範囲に争いがある場合は弁護士に相談を
被相続人の財産を調査し、相続財産の対象となるもの、ならないものを理解したうえで、相続財産を特定し遺産分割協議を進めることは、当事者のみでは困難であるケースが多くありあます。また、相続人間で相続財産の範囲について、争いが起こる場合も多くあります。
トラブルを防ぎ、円滑に相続手続きを進めるためには、相続問題に対する知識と経験を持つ弁護士に相談されることをお勧めいたします。