遺産の評価について

遺産分割の対象財産を確定したら、次にそれらの財産を、相続分に応じて相続人に適切に分配するために、全ての遺産の価値を評価する必要があります

 

遺産の評価の基準時

遺産分割の際の基準時は、遺産分割時とされています。したがって、現に遺産を分割する時点の評価に従って遺産を分割することになります

ただし、現実には、将来の遺産分割確定時点での評価をすることは出来ないため、近接した調査終了時点を基準時とすることになります。

なお、特別受益や寄与分が問題となる場合の評価の基準時は、実務上、相続開始時を基準時としています。

したがって、特別受益や寄与の目的物を相続開始時における時価で評価し、遺産に持戻して計算し、相続分の算定を行うことになります。

遺産の評価方法

預貯金や株式、有価証券投資信託などの金融資産については、時価による評価となり、金額が明確であるため、相続人間で争いがおこることは多くありません。

遺産の評価で争いになるのは、主に不動産の評価方法や非上場株式の評価方法です。

 

不動産の評価方法

1.市場価格

実際に、不動産を市場で売却する際につく相場価格であり、遺産分割の際の評価方法として多く用いられます

市場価格を調べるには、不動産会社に査定をお願いし、査定額を算出してもらいます。不動産鑑定士に依頼することも可能ですが、数万円から数十万円の費用がかかります。

2.固定資産税評価額

固定資産税評価額は固定資産税の課税明細書や評価証明書で確認することができます。固定資産税評価額は、土地と建物に設定されています。

ただし、市場価格よりも低い場合が多いため、この評価方法では、相続人間で合意を得ることは難しいといえます。

3.相続税評価額(路線価)

路線価は、国税庁がHP等に公表しており、毎年改定されています。ただし、路線価は、土地の評価額しか算出できず、建物の評価は出来ません。また、市場価格より低い場合が多いため、相続人間の合意を得ることは難しいといえます。

4.公示価格

国土交通省が正常な価格として公示しているものですが、公示価格を評価方法として利用するケースはほとんどありません。

株式等の評価方法

上場株式や投資信託は、公表された取引価格に基づいて評価します。

非上場株式の場合は、取引相場がないため、会社の規模や評価の目的などによって、複数の算定方式があり、専門的な評価方法が必要となります。専門家に評価を依頼する必要がある場合もあります。

現金・預金

現金や預貯金は、残高証明書や取引履歴を発行することによって、金額が明示されます。
動産

自動車の評価方法は、中古車業者に査定を依頼するか、車種、年数、走行距離などから中古車の相場を調べるなどにより評価します。

また、絵画や骨董品や貴金属などは専門家に査定を依頼するなどして評価します。

 

相続財産に関する争いは弁護士に相談を

遺産分割協議における遺産の評価は、相続人全員が評価方法について合意ができれば、遺産の価値が算定できることになるため、どこまで厳密な評価を行うは、個別のケースによります

不動産や株式などの評価額については、専門的な知識と経験に基づいて算定することで、最終的に取得する遺産の価格が大きく変わることがあります

また、遺産分割協議は、その性質上、親族間の感情的な争いも生じやすいものですので、迅速かつ確実に財産の範囲を確定し、評価を行うことで、建設的な遺産分割協議を進めることが大切です。

不利益を被ることなく、確実に遺産分割を進めたい方は、一度弁護士にご相談ください。

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