寄与分について
寄与分とは、相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加に対し、通常期待される程度を超える貢献(寄与)をした人がいる場合、他の相続人との公平を図るために、その貢献をした相続人に対し、寄与分を相続分に加えた財産を取得させる制度です。
例えば、家業を長年手伝っている場合や、被相続人の介護をしていた場合などがあたります。
寄与分が認められるケース
♦寄与が認められる人
寄与分が認められるのは、原則として法定相続人のみです。
相続人以外の第三者が相続人に特別な貢献をした場合であっても、寄与分は認められません。
ただし、相続人以外の被相続人の親族について、被相続人に対する特別な寄与がある場合は、その遺産を相続した相続人に対して寄与に応じた金銭の支払いを請求することができるとされています。
例えば、被相続人の長男の妻が、長年献身的に被相続人の介護をしていた場合などは、遺産分割協議において寄与分を主張することは出来ませんが、遺産分割を終えた後、長男の妻は、遺産を相続した相続人らに対して、寄与分に応じた金銭を請求するこができます。
♦寄与分が認められる要件
1.「特別の寄与」であること
被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超える貢献である必要があります。つまり、夫婦の扶養義務や子どもの扶養義務の範囲を超えた、通常期待される以上の貢献をした場合です。
1.被相続人の財産の維持または増加
多大な貢献をしていたとしても、被相続人の財産の維持または増加が認められない場合は、寄与分は認められません。
また、相続財産の維持または増加などの財産上の効果がない、精神的な援助については寄与分として考慮されません。
♦寄与行為の類型
具体的に以下のような行為が寄与行為にあたります。
1.家業従事型
被相続人が行っていた事業(農業や商工業)に従事することによって、寄与が認められる場合があります。
具体的な要件は、以下の4つです。
・無償性(報酬が発生しないもしくは非常に少ない給料)
・特別の貢献(寄与行為により被相続人の事業が成功して財産が増えたり、維持することができたような特別な貢献があった場合)
・継続性(長期間にわたる従事)
・専従性(片手間で行っていないこと)
寄与に対して相当な対価の支給を受けていたり、従事していた場合でも被相続人の事業が成功して財産が増加または維持するようなことはなかった場合は、寄与行為として認められません。
2.金銭等出資型
被相続人に金銭を給付していた場合は寄与行為にあたります。
例えば、不動産の購入資金の援助をしていた場合や、被相続人の借金返済のために金銭を給付していた場合があります。また、医療費や施設入所費などを負担していた場合もこれにあたります。
3.療養監護型
被相続人の療養介護を行い、被相続人の監護費用等の支出を免れさせるなど、相続財産の維持に寄与した場合は寄与行為にあたります。
具体的な要件は、以下の5つです。
・療養看護の必要性
・無償性(報酬が発生しない)
・特別の貢献(医療費等の支払いを相続人が行い、被相続人の財産を維持した場合)
・継続性(長期間にわたる療養介護)
・専従性(片手間で行っていないこと)
介護の必要性があまり高くない被相続人と同居し、家事の援助を行っていいた場合など、通常の身分関係から当然期待される程度の療養介護であれば、寄与とは認められません。
4.扶養型
相続人が被相続人の扶養を行うことで、被相続人が生活費等の支出を免れ、相続財産が維持された場合は寄与行為にあたります。
例えば、毎月仕送りをしていた場合や、同居して衣食住の面倒を看ていた場合です。
ただし、夫婦や直系血族、兄弟姉妹は互いに扶養する義務があり、通常の扶養の範囲を超える特別な貢献が必要です。
寄与分があるときの遺産分割
寄与分の算定方法は、原則として共同相続人間の協議によって決めることとなります。
寄与分を明確に金額に換算することは難しいため、寄与分を主張しても遺産分割協議が整わない場合が多くあります。その場合は、家庭裁判所に審判を求めることとなります。
家庭裁判所においては、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して寄与分を算定するとされており、広範な裁量に委ねられています。
寄与分が算定できたら、まず、遺産から寄与分の評価額を差し引きます。遺産から寄与分を控除した額のことをみなし相続財産といいます。次に、みなし相続財産を、相続分に応じて分配します。
寄与分が問題となる遺産分割は弁護士に相談を
寄与分が認められるかは、個別具体的な事情から判断しなければならず、相続に関する専門的な知識が必要となります。また寄与分が認められるとしても、寄与分の評価額をどの程度にするべきかが問題となります。
また、寄与分が問題となる場合には、その立証についても問題となります。
寄与分は数年前の事実であることが多く、親族間のやり取りであることから書面などの記録が残っていないことも多いです。
適正な遺産分割の実現のためには、このような証拠関係を踏まえつつ、寄与分を考慮する必要があります。
寄与分を主張して正当な相続分を取得したい方は、一度弁護士にご相談され、慎重に対応されることをお勧めいたします。