遺言執行者が必ず必要となる遺言事項はありますか?また、遺言執行者を指定したときに、迅速な遺言執行を実現するために、遺言に記載しておくべきことはありますか?
回答
遺言による認知、相続人の廃除・廃除の取消しは、遺言執行者のみが執行できるとされています。
下記文例のように、遺言執行者の権限を具体的に記載することで、より迅速かつ正確に遺言事項が実現できるといえます。
文例1
第〇条 遺言者は遺言執行者に対し、次の権限を付与する。
① 不動産、預貯金、株式、その他相続財産の名義変更、解約、及び払い戻し
② 貸金庫の開閉、内容物の受領
③ 遺言者の債務の弁済
④ その他本遺言書を執行するために必要な一切の行為
文例2
第〇条 遺言者は、遺言執行者に対し、上記記載の不動産を売却し、その売却代金をもって遺言者の一切の債務を弁済し、残余の財産を法定相続分に応じて相続人に分配する権限を付与する。
文例3
第〇条 遺言者は、遺言執行者に対し、上記記載の預貯金を解約してその払い戻しを受け、その払戻金を法定相続分に応じて相続人に分配する権限を付与する。
遺言執行者が必要とされる遺言事項
遺言執行者のみが執行出来る事項として、遺言による認知、相続人の廃除・取消しがあります。
遺言による認知について、遺言執行者は、遺言執行者に就職した日から10日以内に、認知に関する遺言書の謄本を添付して、認知の届出をしなければなりません。なお、遺言による認知は、成年の子または胎児の母の承諾が必要な場合を除いて、遺言の効力発生と同時に認知の効力も生じるため、上記の認知の届出は報告的届出としての意味を持つにすぎません。
相続人の廃除・取消しについて、被相続人が遺言で相続人を廃除または、その取消しの意思表示をしたときは、遺言執行者は、その遺言の効力発生後、遅滞なく、その相続人の廃除または廃除の取消しを家庭裁判所に請求しなくてはなりません。
相続人の廃除、廃除の取消しについては、遺言により直ちに効力が生じるわけではなく、裁判所における審判または調停が成立したときに、被相続人の死亡時にさかのぼって効力が生じます。そのときは、確定した日から10日以内にその旨の届出をしなければなりません。
遺言執行者が必要とされる遺言事項があるがにもかかわらず、指定が遺言でなされていない場合には、利害関係人の請求によって家庭裁判所が遺言執行者を選任することが出来ます。
遺言者の職務内容の具体的記載
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされています。
遺言執行者を指定すれば、法令によって、その地位や、権限、職内容等が定まり、遺言による具体的な職務内容の指定がなくとも、一切の相続財産を清算する権限を有します。
しかし、遺言執行者が法律専門家でない場合などは、手続きが円滑に進行するよう、遺言事項に即して、その権限を上記文例1のように具体的に列挙しておくことが望ましいといえます。
また、文例2や文例3のように、特定の相続財産について、遺言執行者の具体的な職務内容を明示しておくことも可能です。
なお、民法において、特定の財産を共同相続人の1人または数人に承継させる旨の遺言があったときは、遺言執行者は受益相続人が対抗要件を備えるために必要な登記等の手続きや、預金の払い戻し、解約ができることが明記されていますが、特定の財産を相続人以外に遺贈する場合には、上記文例のように、遺言執行者の職務内容を具体的に列挙しておくことで、手続きが円滑に進む場合があります。遺言内容に即して、その内容が確実に実行できるよう、遺言執行者の権限を具体的に記載しておくべきといえます。
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