夫婦の間に子はおらず、妻と兄が法定相続人となりますが、兄には相続させず、妻に全ての財産を相続させたいのですが可能ですか?
回答
兄弟姉妹に遺留分はないので、遺言で妻に全財産を相続させる意思表示をすれば、可能です。
第〇条 遺言書は、遺言者の妻に全ての財産を相続させる。
相続分の指定と遺留分
相続分とは、共同相続人の相続財産全体に対する各相続人の持ち分をいいます。
被相続人が遺言を作成しなかった場合は、相続財産は法定相続分の規定に従って配分されますので、法定相続人が妻、兄のみの場合の法定相続分は、妻が4分の3、兄が4分の1となります。兄弟が複数人いる場合は兄弟の相続分4分の1の頭割りとなります。
被相続人は、遺言で、法定相続分とは異なる割合で共同相続人の相続分を定めることができます。この相続分の指定は、必ず遺言によらなければなりません。遺言で相続分が指定されたときは、法定相続分の規定に優先して適用されます。
ただし、遺言による遺留分を侵害する相続分の指定について、遺留分権利者から遺留分侵害額の請求がなされた場合には、法定相続分を上回る相続分の指定を受けた相続人は、これに応じなければなりません。相続分の指定により遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害している受遺者や受贈者、他の相続人に対してその遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することを遺留分侵害額の請求といいます。
遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人です。上記事例の場合、兄には遺留分侵害額の請求権はないため、妻に全財産を相続させる遺言により遺言者の意思は実現できるということになります。
相続財産の具体的な記載
全ての財産を1人の相続人に相続させる場合、相続財産を具体的に特定せずに表示しても、問題はありませんが、このような場合、相続人にすれば、不動産の有無やその内容や所在、銀行の支店、口座番号等が分からないと、遺産の内容の調査や確認が必要となり、不動産の相続登記の手続きや、金融機関への預金の払い戻しや名義変更などの手続きが煩雑となることがあります。
また、遺言において遺贈や相続分の指定があった場合であっても、その相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、登記、登録、通知その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないとされているため、相続開始後に登記等の手続きをしておく必要があります。
以上のことから、トラブルを防ぎ、円滑に手続きを進めるためにも、可能な限り、特に重要な財産については具体的に記載しておくなどの配慮が必要になります。
相続財産を具体的に表示した場合、記載されていない財産が後に発見された場合に誰がそれを相続するのか、トラブルのもとになる恐れがあるため、「下記の財産、その他一切の財産を」と記載した方が好ましいといえます。
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