全財産を妻に相続させたいと思っていますが、私より先に妻が死亡した場合は、長男に全財産を相続させたいと思っています。そのような遺言書を作成することはできますか?
回答
下記文例のように、遺言者より先に配偶者が将来亡くなる場合に備えて、予備的に、遺産を相続させる次の相続人を長男に指定しておくことが可能です。
次の相続人を指定しておくことで、遺言者より先に配偶者が亡くなったときの遺産の帰属先を、相続人全員による遺産分割協議で決定する必要がなくなります。遺産分割協議による相続人間のトラブルを防ぐにおいても、次の相続人を指定しておくことは有効であるといえます。
第〇条 遺言者は,遺言者の有する下記の財産のほか、一切の財産を、遺言者の妻に相続させる。
(1)土地
所在 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目
地番 〇〇番
地目 〇〇
地積 〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物
所在 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
家屋番号 〇〇番
種類 〇〇
構造 ○○
床面積 ○○.○○平方メートル
(3)預金
①〇〇銀行〇〇支店普通預金口座
口座番号〇〇
口座名義〇〇○○
②〇〇銀行〇〇支店普通預金口座
(4)・・・・・
第〇条 遺言者より前に妻が死亡したときは、遺言者は、前条で妻に相続させるとした財産全部を、長男に相続させる。
予備的遺言
遺言で全財産を相続させることにしていた特定の相続人が遺言者より先に亡くなった場合、その相続人に関して定めた遺言の部分は効力を失って無効になります。つまり、予備的遺言をせず、「全財産を妻に相続させる」内容の遺言を作成していたが、妻が遺言者より先に亡くなり、また、妻が亡くなった時には遺言者に遺言能力が無くなっていて新たな遺言が作成できない、というような場合は、遺言がなかったと同じ状態になります。
そのため、その遺産は、相続人全員の遺産分割協議でその帰属を決めることとなります。
相続人が多数いたり、所在が不明の相続人がいるなど、相続人間のトラブルが心配されるような場合には、配偶者が将来亡くなる場合に備えて、予備的に、次の相続人を指定しておくことができます。
このような遺言を予備的遺言といい、上記文例の「遺言者より前に妻が死亡したときは、遺言者は、前条で妻に相続させるとした財産全部を、長男に相続させる。」という部分がこれにあたります。
遺言者と配偶者が同時に死亡した場合に備えて
仮に、同一事故などで遺言者と配偶者が同時に亡くなったといった場合も、上記と同じ問題が起きます。
上記文例ですと、「遺言者より前に妻が死亡したとき、又は同時に死亡したときは、」と記載しておくことで、対応しておくことも可能です。
相続財産の具体的な記載
全ての財産を1人の相続人に相続させる場合、相続財産を具体的に特定せずに表示しても、問題はありませんが、このような場合、相続人にすれば、不動産の有無やその内容や所在、銀行の支店、口座番号等が分からないと、遺産の内容の調査や確認が必要となり、不動産の相続登記の手続きや、金融機関への預金の払い戻しや名義変更などの手続きが煩雑となることがあります。
また、遺言において遺贈や相続分の指定があった場合であっても、その相続による権利の承継は、法定相続分を超える部分については、登記、登録、通知その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないとされているため、相続開始後に登記等の手続きをしておく必要があります。
以上のことから、トラブルを防ぎ、円滑に手続きを進めるためにも、可能な限り、特に重要な財産については具体的に記載しておくなどの配慮が必要です。
相続財産を具体的に表示した場合、記載されていない財産が後に発見された場合に誰がそれを相続するのか、トラブルのもとになるため、上記文例のように「ほか、一切の財産を」と記載した方が好ましいといえます。
当事務所の遺言書作成
当事務所は、多くの遺産分割協議案件を扱い、相続が紛争になった時の対応に多くのノウハウを有しており、このような紛争時の多くのノウハウを活かし、紛争を予防するための遺言作成を得意としています。
将来、相続が紛争化しないよう、しっかりとした予防策を講じたいとお考えの方は、是非当事務所にご相談ください。必ずお力になります。