相続させたくない相続人がいるのですが、相続させない方法はありますか?
回答
被相続人の意思により、生前に家庭裁判所に請求もしくは、遺言に記載することで、相続人となる人の相続資格を奪うことを推定相続人の廃除といいます。
相続人の廃除ができる場合は、遺留分を有する推定相続人(配偶者、子、直系尊属)に非行や被相続人に対する虐待や侮辱などの廃除原因がある場合です。
廃除された相続人は遺留分を含めた一切の相続権を失います。
また、法定相続人に欠格事由がある場合、相続権の資格を失います。これを相続欠格といいます。欠格事由は民法において定められています。
遺贈や遺言によって相続させないとする場合の注意
遺贈など、財産を他の人に贈与することによって財産が相続人にわたらないようにしたり、遺言において相続人の相続分を指定して、相続させたくない人には、相続しない旨の記載をすることが可能です。
このような方法は、相続人が兄弟姉妹のみの場合は有効であり、兄弟姉妹の相続権を失くすことができます。ただし、兄弟姉妹以外の配偶者や子、直系尊属である相続人には、遺留分侵害額請求権が認められています。
相続させたくない相続人から遺留分侵害額請求がなされた場合は、遺贈や相続を受けた人が、遺留分侵害額請求者に対して遺留分に相当する額の金銭を支払う必要があり、相続人間でトラブルとなる場合が多くあります。
遺留分に相当する財産のみを、相続人させたくない相続人に残す旨の遺言をのこし、最低限の相続を保障しておくことが、トラブルを防ぐためには有効です。
相続人の廃除により相続させない場合
♦相続人の廃除ができる場合
被相続人に対する虐待または重大な侮辱がある場合や、その他著しい非行がある場合に、その相続人の遺留分を含めた一切の相続権を奪うことができます。
ただし、廃除の効果は本人のみに及び、廃除された相続人の子は代襲相続することができるので注意が必要です。
♦廃除の方法
相続人の廃除を行う場合は、生前に家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言によって廃除の意思表示をし、相続開始後に遺言執行者が申し立てを行う方法があります。
遺言で相続廃除をする場合には、遺言執行者を指定しておく必要があります。
♦廃除の撤回
被相続人の生前に、裁判所に廃除の取消しを請求する方法と、遺言書によって廃除取消しの意思表示をし、相続開始後に遺言執行者が裁判所において手続きをする方法があります。
相続欠格により相続させない場合
法定相続人であっても、欠格事由に当てはまれば、相続の資格を失います。それを、相続欠格といいます。被相続人の意思とは関係なく当然に相続権がはく奪されます。また、相続欠格者の相続権は回復することはありません。
欠格事由は、民法において定められており、以下の5つの事由に該当した場合、相続人となることはできません。ただし、相続欠格は本人のみで生じるため、代襲相続は発生することになります。
①故意に被相続人又は先順位・同順位の相続人を死亡または死亡させようとして刑に処せられた場合
②被相続人が殺害されたことを知って、これを告発や告訴をしなかった場合
③詐欺または強迫によって、被相続人が遺言をし、遺言を撤回、取消、変更することを妨げた場合
④詐欺または脅迫によって、被相続人に遺言をさせ、または、取り消し、変更、妨害させた場合
⑤被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠蔽した場合