借主または貸主が亡くなった場合、賃貸借契約はどのようになりますか?
回答
賃借人が亡くなった場合、賃借人としての地位は、相続人に相続されます。
また、賃貸人が亡くなった場合も同様に、賃貸人としての地位は、相続人に相続されます。
借主が亡くなった場合
相続において、原則として被相続人の一切の権利義務が相続の対象となります。
借主が亡くなった場合、賃借権、賃料支払い義務や用法遵守義務など賃借人に関する権利義務がすべて相続されます。
相続人が複数いる場合は、相続人全員が共有して、それぞれの法定相続分に応じて相続することになります。
遺産分割協議により、賃借権を相続する相続人が確定した場合は、その相続人が単独で賃借人としての地位を承継します。
♦賃貸借契約の継続
賃借権を相続するにあたり、手続きも必要ありません。賃貸借契約の再契約の必要もなく、賃貸借契約は有効に存続することとなります。ただし、契約当事者が異なると後にトラブルとなる恐れがあるため、賃借権を相続する人を当事者とした契約書を新たに作成しておくことをお勧めいたします。
♦賃貸借契約の解約
相続人が誰も賃貸不動産を利用しない場合は、賃貸借契約を解約する必要があります。
解約について、被相続人の賃貸借契約書の内容を確認する必要があります。
期間の定めがない場合は、いつでも解約の申入れをすることが出来ます。民法においては、土地は申入れから1年、建物は申入れから3か月で契約が終了するとされています。
この期間は、個々の賃貸借契約において変更して定めることが出来ますので、契約書において「解約申入れから1か月で解約となる」など記載があれば、そちらが優先されます。
期間の定めがある場合は、契約書において中途解約可能の旨の記載があれば、期間の定めがない場合と同様に解約することが出来ます。
敷金についても、敷金返還請求権を相続人が法定相続分に応じて承継するため、相続人は法定相続分の敷金の返還を貸主に請求することができます。
貸主が亡くなった場合
相続において、原則として被相続人の一切の権利義務が相続の対象となりますので、賃貸人としての地位も相続に相続されます。
不動産を取得した相続人が賃貸人としての地位を相続することとなります。
賃貸人の地位を相続する際に、賃借人の同意は必要なく、賃貸借契約を作成する必要はないとされています。
ただし、契約当事者が異なるとトラブルや不都合が生じる恐れがあるため、相続発生後、賃貸借契約を更新しておくべきといえます。
また、敷金返還義務についても、賃貸人の地位を取得した相続人に承継されますので、賃貸借契約終了の際には、敷金を返還しなければなりません。
賃料の受け取りについては、振込先であった被相続人の口座は、相続発生後凍結されてしまうので、早急に、振込先変更のお知らせをする必要があります。