何年前までの贈与が特別受益として持ち戻しの対象となりますか?
回答
特別受益の持ち戻しの対象となる期間に制限はありません。何年前の贈与であっても、特別受益に該当する贈与は持ち戻しの対象です。
ただし、法改正により、2019年7月1日から、遺留分の算定においては、相続開始前10年以内の特別受益に該当する贈与のみ持ち戻しの対象となりました。
特別受益がある場合の遺産分割
特別受益とは、特定の法定相続人が被相続人から、生前贈与または遺贈によって特別に受けた利益のことをいいます。また、特別受益を受けた人を特別受益者といいます。
一部の相続人が生前に大きな経済的利益を得ているにもかかわらず、相続の際に、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けると不公平になります。
このような場合に、相続人同士の公平を図るため、特別受益を相続分の前渡しとみなし、相続分の計算時に贈与を相続財産に持ち戻して、つまり加算して、相続分を算定するとされています。特別受益があった相続人は、相続分から特別受益の価額を差し引いた残額を相続します。
特別受益を相続財産に持ち戻す際の対象財産の価額は、贈与した時点ではなく、原則として相続開始時点の価額により評価されます。
特別受益の持ち戻し免除
特別受益は、何年前のものであっても相続財産に持ち戻すことが原則ですが、被相続人が持持ち戻しをしないように意思表示した場合、持ち戻しは免除されます。
これを特別受益の持ち戻し免除といい、被相続人が遺言などで、生前贈与について持ち戻し免除の意思表示をした場合、その贈与は相続財産に持ち戻さずに遺産分割が行われます。
また、被相続人が遺言などで持ち戻し免除の意思を明示していない場合であっても、持ち戻し免除の意思があったことが類推できれば免除が認められる場合があります。この際、被相続人の贈与の目的や、事情などから推測されます。
配偶者への持ち戻し免除に関する法改正
法改正により、2019年7月1日から、婚姻期間が20年以上の配偶者に対する自宅の生前贈与については、持ち戻し免除の意思表示があったと推定され、持ち戻しの対象ではなくなりました。
特別受益がある場合の遺留分侵害額請求
ただし、持ち戻し免除の意思表示があった場合でも、贈与が遺留分を侵害する場合は、遺留分を侵害された他の相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができます。
遺留分を侵害された相続人は、贈与を受けた人に対し、その侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。
ただし、法改正により、2019年7月1日から、遺留分の算定において、価額を算入できる贈与は、相続開始前10年以内の特別受益に該当する贈与のみとなりました。
また、遺留分侵害額請求は、相続の開始及び侵害があったことを知った時から1年以内に行う必要があるため注意が必要です。