相続人間でトラブルが起こる可能性があるので、確実に遺言を執行するためにも、遺言の執行を弁護士にお願いしたいのですが、どのように記載すればよいですか?
回答
文例1のように、執行を要する遺言中で指定しておくことも、文例2のように、別の遺言において指定することも可能です。
法律専門家である弁護士は、相続に関する全てを取り扱っているため、紛争を予防するための対策の提供を含め、迅速公正に遺言を実現することができる点でメリットがあるといえます。
文例1
第〇条 遺言者は、この遺言の執行者として、次の者を指定する。
住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
職 業 弁護士
氏 名
生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日生
文例2
第〇条 遺言者は、平成○○年〇月〇日付けで作成した公正証書遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
職 業 弁護士
氏 名
生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日生
遺言執行者
遺言の執行は、遺言者の相続人が行うのが原則ですが、相続人間の意見の不一致や利害対立などによって、遺言事項によっては、遺言の執行が迅速公正にできない可能性が生じます。
そのため、民法において、遺言執行者が遺言の執行に関与することを認めており、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するとされています。
また、民法において、遺言執行者の行為の効力について、「相続人に対して直接にその効力を生じる」とされており、必ずしも相続人の利益のために職務を行うものではないことが明示され、遺言執行者は、あくまでも遺言者の意思に従って職務を行うこととなります。
なお、相続人としては遺言執行者の有無について重大な利害関係を有するため、遺言執行者は、その任務開始後遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。
遺言執行者の指定
遺言執行者の指定は、必ず遺言で行う必要があり、上記文例1のように、執行を要する遺言中で指定しておくことも、文例2のように、遺言作成後に遺言執行者を指定したいと思い至った場合などは、別の遺言において指定することも可能です。
また、遺言執行指定がない場合や、指定された者が辞退したときなど、遺言執行者がいない場合には、利害関係人の請求によって家庭裁判所が遺言執行者を選任することがあります。
相続人や受遺者が多数いる場合、相続人間で争いが生じる可能性が高い場合や、相続の内容が複雑な場合等は、遺言執行者がいなければ、遺言が円滑に執行されず、相当な時間を要することがあります。よって、このような場合には、遺言執行者を指定しておくことが相当であるといえます。
遺言執行者を弁護士に依頼するメリット
遺言執行者には、未成年者及び破産者はなることはできませんが、その他に制限はなく、相続人、受遺者、法人も指定することが可能です。
しかし、利害関係のある相続人等を遺言執行者に指定すると、遺言書が適正に実行されず、相続人間で紛争になる恐れがあります。
相続人間で争いが生じる可能性が高い場合や、相続の内容が複雑な場合等は、利害関係者間の調整や、契約の締結、登記申請や引き渡し等の複雑な処理が必要になることがあります。
また、相続財産について、遺言の執行対象の財産の調査や、遺言の内容に沿って、相続人の相続割合や分割の方法等を指定し、実際に財産を分配する作業が必要です。
以上のように、遺言を執行する際には、法律の専門的な知識が必要となるため、法律専門家である弁護士を指定しておくことをお勧めいたします。
特に、相続人間等で紛争が生じた場合や、遺言執行を妨害する者がいる場合など、訴訟や審判の提起、対応が必要となります。
この場合、弁護士以外の金融機関等を遺言執行者に指定していたときは、紛争対応のために、遺言執行者への報酬とは別にさらに弁護士費用が必要となるため、費用がかさむ可能性があります。
弁護士は、相続に関する全てを取り扱っているため、紛争を予防するための対策の提供を含め、迅速公正に遺言を実現することができる点でメリットがあるといえます。
また、遺言執行者に指定した弁護士に遺言の保管を依頼することで、遺言書が隠匿されるなどのトラブルも防ぐことが出来ます。
当事務所の遺言書作成
当事務所は、多くの遺産分割協議案件を扱い、相続が紛争になった時の対応に多くのノウハウを有しており、このような紛争時の多くのノウハウを活かし、紛争を予防するための遺言作成を得意としています。
将来、相続が紛争化しないよう、しっかりとした予防策を講じたいとお考えの方は、是非当事務所にご相談ください。必ずお力になります。