私は独身で、両親は他界し、兄弟姉妹もおらず身寄りがないため、面倒を看てくれた知人に財産を渡したいと思っていますが、可能ですか?
回答
相続人でない者に、財産を譲るためには、遺贈の方法をとることができます。
下記のような遺言がなく、相続人がいない場合は、遺産は国庫に帰属することになるため、確実に遺言を実現するためには、予め遺贈する相手方の意思を確認することが望ましいといえます。
第〇条 遺言者の隣人〇〇(住所○○)に次の財産、その他一切の財産を遺贈する。
(1)預金
①〇〇銀行〇〇支店普通預金口座
口座番号〇〇
口座名義〇〇○○
②〇〇銀行〇〇支店普通預金口座
(2)・・・・・
第〇条 遺言者は、この遺言の執行者として、次の者を指定する。
住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
職 業 弁護士
氏 名
生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日生
遺贈
相続人でない者に、財産を譲るためには、遺贈の方法をとることができます。
遺贈とは、被相続人が遺言によって無償で自己の財産の全部または一部を譲る処分をいいます。遺言により、遺贈を受け取る者として指定された者を受遺者といい、受遺者となり得る者に特段の制限はなく、法人でもなることが出来ます。
親族以外の方に遺贈する場合には、遺言書に氏名、住所、遺贈する財産を明確に表示する必要があります。
相続人でない者に遺産を残す方法として他に生前贈与や死因贈与がありますが、生前贈与はなくなる前に財産を失うことになり、また贈与税が相続税に比べて高額となるため、遺言で遺贈する方法をとることが多くなっています。
財産の具体的な記載
このような場合、受遺者にすれば、不動産の有無やその内容や所在、銀行の支店、口座番号等が分からないと、遺産の内容の調査や確認が必要となり、不動産の登記の手続きや、金融機関への預金の払い戻しなどの手続きが煩雑となるので、財産について、可能な限り具体的に記載しておく必要があります。
全ての財産を遺贈したい場合には、記載されていない財産が後に発見された場合に備えて、上記文例のように「ほか、一切の財産を」と記載した方が好ましいといえます。
遺贈の放棄
遺贈は、遺言者の単独行為であるため、受遺者の意思によらず、遺言者の死亡の事実によって、効力を生じることになりますが、民法において、受遺者は、遺言者の死後いつでも遺贈の放棄をすることができると定められています。
遺贈の放棄は、遺言者の死亡時に遡って効力が生じます。
遺贈を検討されている場合には、予め受遺者の意思確認を行うことが望ましいといえます。
遺言執行者の指定
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利権限を有しています。また、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができます。
不動産の遺贈があった場合などは、登記名義を被相続人から受遺者に移転する必要がありますが、この所有権移転登記手続きには、遺言執行者と受遺者の共同申請が必要となります。
また、民法において、特定の財産を共同相続人の1人または数人に承継させる旨の遺言があったときは、遺言執行者は受益相続人が対抗要件を備えるために必要な登記や、預金の払い戻し、解約ができると明記されていますが、上記文例のように、相続人でない者に対する遺贈については、遺言執行者の職務内容を遺言内容に即して、具体的に列挙しておくことで、その内容が確実に実行できるよう、遺言執行者の権限について具体的に記載をしておくことが望ましいといえます。
当事務所の遺言書作成
当事務所は、多くの遺産分割協議案件を扱い、相続が紛争になった時の対応に多くのノウハウを有しており、このような紛争時の多くのノウハウを活かし、紛争を予防するための遺言作成を得意としています。
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