私は15年前に妻と別居した後、別の女性と内縁関係となり、現在も一緒に生活しています。別居中の妻には相続させたくないので、財産をすべて内縁の妻に相続させたいのですが、可能ですか?

回答

内縁の妻は、戸籍上は妻でないため、当然には遺言者の財産を相続する権利はなく、財産を遺したい場合には遺言書によって遺贈する必要があります

しかし、戸籍上の妻から遺留分侵害額の請求がなされた場合は、これに応じる必要があるので注意が必要です。

第〇条 遺言者は,遺言者の有する下記の財産のほか、一切の財産を、内縁の妻に遺贈する。

(1)土地
所在  〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目
地番  〇〇番
地目  〇〇
地積  〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物
所在  〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
家屋番号 〇〇番
種類  〇〇
構造  ○○
床面積 ○○.○○平方メートル
(3)預金
①〇〇銀行〇〇支店普通預金口座
口座番号〇〇
口座名義〇〇○○
②〇〇銀行〇〇支店普通預金口座
口座番号〇〇
口座名義〇〇○○

第〇条 遺言者は、次の者を遺言執行者に指定する。

住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
職 業 弁護士
氏 名
生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日生

2 遺言執行者は預貯金の名義書換、解約、払戻し等本遺言の執行に関する一切の権限を有する。

 

内縁の妻への遺贈

内縁関係にある者とは、婚姻の届出をしていないが、社会的には夫婦と認められる者をいい、事実上は遺言者と夫婦生活を営んでいたとしても、戸籍上は夫婦でないため、当然には遺言者の財産を相続する権利はなく、財産を遺したい場合には遺贈する遺言書を作成する必要があります

遺贈とは、被相続人が遺言によって無償で自己の財産の全部または一部を譲る処分をいいます。遺言により、遺贈を受け取る者として指定された者を受遺者といい、受遺者となり得る者に特段の制限はありません。相続人でない者に、財産を譲るためには、遺贈の方法をとることになります

なお、遺言において遺贈があった場合でも、その権利の承継は、登記、登録、通知その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができません。不動産や債権等の相続財産がある場合には、相続開始後、対抗要件を備える手続きが必要となります。

上記事例において、別居中の妻が不動産を法定相続分に従って第三者に売却した場合などは、遺贈を受けた内縁の妻が遺言に従って登記手続きをしていなければ、その第三者に対抗することは出来ず、第三者は妻の法定相続分の不動産の取得が可能となります。

内縁の妻への遺贈の有効性

内縁関係の妻への遺贈は、原則的に有効ですが、遺贈をする夫に法律上の配偶者がいる場合は、遺贈が公序良俗に反するか問題となることもあります

不倫関係にあるものに対する遺贈は、不倫関係の維持、若しくは強要を目的としていると推定されることもあり、不倫関係にある者に対する遺贈は公序良俗に反するとして、無効になる可能性が高くなります。

このことから、内縁関係が成立した時期と法律上の婚姻関係が破綻した時期や原因によって公序良俗に反する程度によって、内縁の妻への遺贈の有効性が判断されると解されます。

積極的に不倫関係の維持継続、または強要を目的する遺贈以外は有効と判断されます。

遺留分の侵害

遺留分権利者(兄弟姉妹以外の相続人)から遺留分侵害額の請求をされた場合には、受遺者はこれに応じて、遺贈された財産の価額を限度として遺留分侵害額に相当する金銭を負担しなければなりません。金銭請求を受けた受遺者が、すぐには金銭を用意することができない場合には、その受遺者が裁判所に請求することによって、負担しなければならない金銭債務の全部または一部の支払いにつき、相当の期間を与えてもらうことができます。

上記事例の場合、法津上婚姻関係にある妻が遺留分侵害額を請求したときは、その妻との間に子供がいない場合、受遺者である内縁の妻は被相続人の財産の2分の1に相当する価額の金銭の支払いに応じなければなりません

紛争が生じる恐れがある場合は、別居中の妻にも一定の財産を相続させることを検討してもよいといえます。

遺言執行者の指定

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利権限を有するとされています。また、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができます。つまり、財産を遺贈する場合、履行義務者は、一義的には相続人や受遺者となりますが、遺言執行者を指定した場合には遺言執行者のみに限られます

上記事例においては、不動産や債権等について、登記、登録、その他の対抗要件を備えておく必要があり、さまざまな手続きを要します。また、別居中の妻から遺留分侵害額の請求がなされた場合にはそれに応じる必要もあるため、遺言を確実に実現し、手続きを円滑に進めるためにも、遺言執行者を指定しておくことが望ましいといえます。

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当事務所は、多くの遺産分割協議案件を扱い、相続が紛争になった時の対応に多くのノウハウを有しており、このような紛争時の多くのノウハウを活かし、紛争を予防するための遺言作成を得意としています。

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