妻子以外に不倫相手の女性Aにも財産を遺したいと考えていますが、可能ですか?

回答

不倫相手への遺贈は無効と判断される可能性もあります。ただし、直ちに無効と判断されるわけではなく、個別具体的な事情を総合的に考慮して、その有効性を判断することとなります。下記文例のような場合、過去の裁判所の判決例からすると、認められる可能性は高いといえます。

第〇条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産の3分の1をAに遺贈する。
第〇条 残余の財産については、妻と長男に、相続分に従ってそれぞれ相続させる。
第〇条 前条内容の遺言を記載したのは、妻と別居した後、約6年間、同棲してきたAの生活を保全するためである。Aは、その間、遺言者に生計を頼ってきており、生活を保全するためには、前条の遺贈が必要であると判断した。

 

遺贈と公序良俗違反

不倫関係にある者に対する遺贈は公序良俗に反するとして、無効になる可能性も高くなります。不倫関係にあるものに対する遺贈は、不倫関係の維持、若しくは強要を目的としていると推定されることも理由に挙げられます。

しかし、公序良俗に反するとして、直ちに無効になるわけではなく、遺言者と配偶者、受遺者の関係、遺贈の目的、遺贈の額や遺産に占める割合、相続人らに対する影響、受遺者の遺贈者に対する生計依存度など、個別具体的な事情を総合的に考慮して、遺贈の有効性を判断することになります。

そのため、上記文例のように、不倫相手に遺贈する理由を具体的に示し、また妻子にも一定程度の財産を相続させることが必要です。

裁判所の判決例

①不倫相手への遺贈の有効性が争われた事例で、遺贈が不倫関係の維持を目的とするものではなく、不倫相手の生活を保全するためになされたものであり、遺贈により相続人の生活の基盤が脅かさるものとはいえないなどの事情があるときには、公序良俗に反するものとはいえないと判事した。

②妻との婚姻関係が破綻した後、10年間同棲した女性に対し、女性が居住する不動産を含む全財産を遺贈する内容の遺言は、公序良俗に反しないと判事した。

③生命保険の保険金受取人を不倫相手とするとの指定は、不倫関係の維持継続を目的とするものであり、公序良俗に反し、無効であると判事した。

包括遺贈と特定遺贈

上記事例のような場合、妻子と不倫相手との関係性からして、遺産分割協議が整わない可能性が高くなります。そのため、上記文例のような包括遺贈(遺言者の相続財産の全部又は割合で示した一部を遺贈の対象とする遺贈)ではなく、特定遺贈(遺言で特定した特定の財産を相続財産から離脱させて特定の者に承継させる処分)により、遺産分割協議を経ずに財産を取得できるようにしておく方が、円滑に遺言を実現するうえで有効といえます。

また、その際は、遺言執行者を指定することをお勧めいたします

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利権限を有しています

また、遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができます。つまり、財産を遺贈する場合、履行義務者は、一義的には相続人や受遺者となりますが、遺言執行者を指定した場合には遺言執行者のみに限られます。

遺言を確実に実現し、トラブルを防いで、手続きを円滑に進めるためにも、遺言執行者を指定しておくことが望ましいといえます。

当事務所の遺言書作成

当事務所は、多くの遺産分割協議案件を扱い、相続が紛争になった時の対応に多くのノウハウを有しており、このような紛争時の多くのノウハウを活かし、紛争を予防するための遺言作成を得意としています。

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