長男が私に対して何度も暴力を振るい、ひどい侮辱を加えてきたので、長男に相続させたくないと考えています。次男だけに財産を相続させるにすればよいですか?
回答
下記文例のように、推定相続人の廃除の意思を明確に示すことで、長男の相続権をはく奪することが可能です。これにより、長男の遺留分も否定されます。
推定相続人の廃除を希望する場合、遺言執行者を遺言で指定しておくべきといえます。
第〇条 遺言者は、長男が遺言者に対して何度も殴る蹴るなどの暴力を加えるなど虐待し、「死ね」とたびたび罵り侮辱を加えてきたことから、長男を相続人から廃除する。
第〇条 遺言者は、この遺言の執行者として、次の者を指定する。
住 所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
職 業 弁護士
氏 名
生年月日 昭和〇〇年〇〇月〇〇日生
遺言による推定相続人の廃除
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となる者)が、被相続人に対して虐待をしたとき、重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。
廃除とは、相続権をはく奪することをいい、推定相続人の廃除が認められた場合は推定相続人の遺留分をも否定することが可能です。
つまり、相続分の指定によって、次男に全ての財産を相続させる旨を記載するだけでは、相続人は長男、次男の2人である場合、長男には4分の1の遺留分が認められ、遺留分侵害額を請求すれば、次男は相当する金銭の支払いを負担しなければなりません。しかし、上記文例のような、推定相続人の廃除により、長男は相続権をはく奪されるので、遺留分の請求すらも出来ないことになります。
ここで、兄弟姉妹など遺留分を有しない推定相続人については、遺言や生前処分で相続させない趣旨を実現することができるので、廃除の対象となるのは、遺留分を有する推定相続人です。
また、子のある者が、予め父や孫を廃除することはできないため、仮に廃除された推定相続人に子がいれば、その子が親に代わって代襲相続することになるため、注意が必要です。
廃除事由の記載
廃除事由は、被相続人に対する虐待、被相続人に対する重大な侮辱、その他の著しい非行の3つに限られます。
遺言には、廃除の意思が明確に記載されていればよく、必ずしも廃除事由の記載を要しません。しかし、遺言で推定相続人を廃除するには家庭裁判所の審判を経る必要があるため、上記文例のように、簡潔に具体的な廃除事由を記載しておくべきといえます。
遺言執行者の指定
民法において、被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない、と定められています。
推定相続人の廃除を行う場合は、必ず遺言執行者の指定が必要となるため、遺言によって予め遺言執行者を定めておくべきといえます。
遺言執行者は、裁判所より廃除の審判が確定し、又は調停が成立したときは、被相続人の死亡時に遡ってその効力が生じ、その旨戸籍の届出をする必要があります。
また、遺言執行者を指定すれば、不動産の売却や債務の清算なども、相続人全員が共同してする必要がなく、遺言執行者がその地位に基づいて、遺言執行者だけで全相続人に代わって遺言を実現することができます。そのため、相続財産が複雑な場合にも、指定しておくべきといえます。
相続人間でトラブルが生じる恐れがある場合や、相続財産が複雑で多額に及び、さまざまな手続きを要するときなどは、法律専門家である弁護士を遺言執行者に指定することをお勧めいたします。
当事務所の遺言書作成
当事務所は、多くの遺産分割協議案件を扱い、相続が紛争になった時の対応に多くのノウハウを有しており、このような紛争時の多くのノウハウを活かし、紛争を予防するための遺言作成を得意としています。
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