子どもが3人いますが、長男には、長男の会社の事業資金として既に多額の財産を与えたため、長男以外の子供らにのみ財産を相続させたいのですが、可能ですか?

回答

下記文例のように、長男への贈与の内容や価格を具体的に記載することで、その特別受益を受けた長男は、相続財産の前渡しを受けたものとして、相続分を減らす、または0にするよう定めておくことが可能です

第〇条 遺言者は次のように相続人の相続分を指定する。
1 次男は、遺産の2分の1を取得する。
2 三男は、遺産の2分の1を取得する。
第〇条 遺言者は、平成○○年〇月、長男に対し、長男の会社の事業資金として金2000万円を贈与したが、次男、三男にはこのような援助はしていない。このような特別受益を考慮して、長男の相続分をなしとしたものである。

 

相続分の指定と遺留分

被相続人は遺言で、法定相続分とは異なる割合で共同相続人の相続分を定めることができますが、遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害している受遺者や受贈者、他の相続人に対してその遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求した場合には、これに応じて金銭を負担しなければなりません

上記事例の場合、長男、次男、三男の遺留分は2分の1に各子の法定相続分3分の1を乗じた6分の1が遺留分となります。

特別受益

特別受益とは、共同相続人のうち、被相続人から贈与を受けたり、婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者がいる場合にその相続人の受けた利益のことをいいます。その特別受益を受けた相続人を特別受益者といいます。

特別受益者の相続分は、原則として、特別受益者が受けた特別受益の価格を遺産に持戻したものを相続財産として各相続人の相続分を算出し、この特別受益の価格を相続分から控除した残額とされています。つまり、相続財産の前渡しを受けたものとして、その特別受益者の相続分を減らすことになります

上記文例の場合は、長男には遺留分として財産の価額の6分の1の相続が保証されますが、仮に相続開始時の相続財産が4000万円であった場合、長男に贈与した2000万円を加算した6000万円が相続財産となり、長男の法定相続分は3分の1である2000万円となりますが、これを贈与により既に受け取っているため、相続分を受領する権利はなく、当然に遺留分もないということになります。

仮に、特別受益の価格が遺留分を侵害している場合は、遺留分侵害額の請求がなされる可能性があることを考慮しておく必要があります

なお、遺留分算定の際は、原則として、続開始前の10年間にした特別受益のみ被相続人の基礎財産に加算されます。ただし、遺留分権利者が受けた特別受益については、相続開始前の10年間にされたものに限定せず、遺留分侵害額算定の際に控除されます。

特別受益に関する記載に法的拘束力はない

特別受益の対象である贈与財産の金銭的評価の基準時は、判例上、相続開始時とされており、遺言で特別受益の内容や価格を表示したとしても、遺産分割において争いがあった場合、裁判所はこの記載に拘束されることなく、裁判所が特別受益の内容の事実認定を行い、価格の評価を行うことになります。

しかし、遺言書に特別受益の内容や価格を具体的に明確に記載することにより、相続開始時に遺産分割協議や裁判所において、それを判断する手がかりとなり、また、共同相続人間の紛争を防ぐためには有効であるといえます。

特別受益となる財産

特別受益となる財産は、遺贈や、婚姻や養子縁組のため、若しくは生計の資本として贈与された財産とされていますが、どのような贈与がこれに当たるかは、相続人間の公平を考慮し、被相続人の資産、収入、家庭状況等を考慮して総合的に判断するべきとされています。

上記文例のような事業資金の援助や、生活費貸与分の債務免除などは、「生計の資本としての贈与」として特別受益にあたるとされています。

ここで、普通教育以上の学費が贈与に当たるか問題になることがありますが、親の資産、社会的地位を基準として、どの程度の高等教育をするのが相応かを判断し、扶養義務の範囲を超えた不相応な学資のみが特別受益として考慮される傾向にあります。

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