私の療養、看護に尽くしてくれた長女に出来る限り多くの財産を相続させたいと思いますが、どのような方法がありますか?

回答

下記文例のように相続分を指定すること、また、寄与分について記載することで長女に多くの財産が相続されるよう定めておくことが可能です。

寄与分の記載には法的拘束力がありませんが、遺産分割協議や裁判所が寄与について審理する際に考慮されて、その割合が決定されます

第〇条 遺言者は、次のとおり相続人の相続分を指定する。
1 長男は、遺産の4分の1を取得する。
2 長女は、遺産の4分の3を取得する。

第〇条 遺言者は、平成28年6月10日に脳梗塞で入院し、以後、平成31年3月23日の今日まで、入退院を繰り返しました。この間、長女は、仕事を退職し、私の看護に尽くしてくれた。
長女の献身的な行為により、治療に専念し、自宅ではヘルパー等を利用することなく、生活することができ、また私の財産を維持することができた。この寄与の価値は、私の財産の2割を下らない。以上の事情から、遺言者の有する一切の財産について、その2割を長女の寄与分として定められることを希望する。

 

相続分の指定と遺留分

被相続人は遺言で、法定相続分とは異なる割合で共同相続人の相続分を定めることができます。

ただし、遺言による遺留分を侵害する相続分の指定について、遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害している受遺者や受贈者、他の相続人に対してその遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求した場合には、これに応じて金銭を負担しなければなりません

本事例のように、相続人が長男、長女のみの場合は、2分の1に各子の相続分である2分の1を乗じた4分の1が各子の遺留分となります。

もっとも、金銭の支払いを請求された受遺者や受贈者、他の相続人がすぐには金銭を準備できない場合には、裁判所に請求することにより、その債務の全部または一部の支払いにつき相当の期限を与えてもらうことができるとされています。

遺留分を侵害する割合での分配を希望しても、それにより相続人間でトラブルが予想されるような場合は、遺留分に相当する財産だけ各相続人に相続するよう指定しておくのも方法です。

寄与分

共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がある場合、遺産分割をするにあたって、当該相続人の寄与分を遺産から控除した分を相続財産とみなして相続分を算定し、寄与をした相続人が、その算定された相続分に寄与分を加算したものを相続できるよう定めることができます

寄与分は、法定遺言事項ではないため、寄与分の記載をしたからといって遺産分割協議や家庭裁判所を拘束する効力はありません。しかし、被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与(上記文例においては、長女の療養看護行為が被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別な寄与があったこと、また療養看護により、職業看護人に支払うべき報酬等の財産の支出を免れたと認められること)があったという事実があれば、共同相続人の遺産分割協議や、裁判所の調停・審判においてその事情が考慮されます

寄与分について、その割合は共同相続人の協議で決定され、もしくは、協議が整わない場合は、寄与者が家庭裁判所に請求を行い、家庭裁判所が、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して寄与分を定めます。(民法904条第2項)

死後に審理されることになるため、遺言書には、寄与の具体的な内容について、明確に記載しておく必要があります。また、遺言書の病状や療養期間の状況や、長女の看護、介護の状況を記した書面を作成しておくなど、特別な寄与があったことについて、証拠化を図ることも必要と考えられます。

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