妻は通院や介護にお金がかかるため、全財産を妻に相続させたいと思っています。長男と長女がいますが、2人には遺留分侵害額を請求しないで欲しいと思っています。そのようなことは可能でしょうか。

回答

下記文例のように、遺言で遺留分権利者である長男、長女に対して遺留分侵害額を請求しないよう求めておくことで、遺留分に関する死後のトラブルを防ぐことにつながる場合もあります。

しかし、このような遺言に法的拘束力があるわけではありません長男、長女が納得できるような理由を付しておくことがトラブルを防止するうえでも望ましいといえます。

第〇条 遺言者は、次のとおり各相続人の相続分を指定する。

第〇条 遺言者は、長男及び長女が遺留分請求をしないことを求める。
長男、長女は安定した職に就き、恵まれた家庭をもっているが、妻は病気がちで通院を続けており、高齢のため介護も必要な状態であるため、万が一に備えて財産を有しておく必要がる。したがって遺言者の全財産を妻に相続させることとした。
長男、長女は遺留分侵害額の請求権を放棄し、妻の生活をサポートしながら、家族仲良く暮らしてほしい。

 

遺留分侵害額の請求権とは

遺言による遺留分を侵害する相続分の指定について、遺留分権利者から遺留分侵害額の請求がなされた場合には、法定相続分を上回る相続分の指定を受けた相続人は、これに応じて遺留分侵害額に相当する金銭を負担しなければなりません

相続分の指定により遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害している受遺者や受贈者、他の相続人に対してその遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することを遺留分侵害額の請求といいます。

もっとも、金銭の支払いを請求された受遺者や受贈者、他の相続人がすぐには金銭を準備できない場合には、裁判所に請求することにより、その債務の全部または一部の支払いにつき相当の期限を与えてもらうことができるとされています。

遺留分割合は、直系尊属のみが相続人であるときは3分の1、その他の場合は2分の1です。本事例の場合には、長男、長女それぞれ4分の1が遺留分となります。

遺留分の放棄を希望する遺言の効力

遺言者は遺言により、所有財産を法定相続分によることなく、自由な割合で指定して相続人に相続させることができ、相続人以外の人に遺贈することもできます。

上記文例のように遺留分の放棄を求めたとしても、遺留分はあくまでも遺留分権利者である長男、長女の権利であって、遺留分放棄を求めたり、遺留分侵害額の請求権を行使しないよう求めたとしても、その遺言に法的拘束力はありません

遺留分の放棄

遺留分の放棄は、相続開始前は、家庭裁判所の許可を受けてすることができます相続開始後は、家庭裁判所の許可は不要です。

つまり、遺言の内容について、事前に納得した子供らが家庭裁判所の許可を受けて遺留分の放棄をしておくことが可能ということです。

なお、共同相続人の一人が遺留分の放棄をしても、他の共同相続人の遺留分には影響しません。

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