遺産を相続する人がいない場合はどのようになりますか?
回答
遺産を相続する人がいないことを相続人不存在といいます。相続人不存在となる場合は、被相続人に配偶者や子、父母・祖父母などの直系尊属、兄弟姉妹もいない場合や、相続欠格、相続廃除、相続放棄により相続人に相続権がなくなってしまった場合があります。
相続人不存在が確定すると、被相続人の遺産は、特別縁故者に財産分与されるか、特別縁故者もいない場合は、国に帰属することになります。
相続人がおらず、財産を渡したい人が要る場合には、財産を遺贈する旨の遺言書を作成しておくことをお勧めいたします。
相続人不存在となる場合
♦法定相続人に該当する人がいない
法定相続人は、被相続人の配偶者、直系卑属(子や孫)、直系尊属(父母や祖父母)、兄弟姉妹が該当します。なお、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥姪が代襲相続人となります。
♦法定相続人に相続権がない場合
1.相続欠格
被相続人の意思によらず、法律上当然に相続権をはく奪されている場合。
欠格事由は、民法において定められており、以下の5つの事由に該当した場合、相続人となることはできません。
①故意に被相続人又は先順位・同順位の相続人を死亡または死亡させようとして刑に処せられた場合
②被相続人が殺害されたことを知って、これを告発や告訴をしなかった場合
③詐欺または強迫によって、被相続人が遺言をし、遺言を撤回、取消、変更することを妨げた場合
④詐欺または脅迫によって、被相続人に遺言をさせ、または、取り消し、変更、妨害させた場合
⑤被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠蔽した場合
2.相続廃除
被相続の意思により、相続人の相続権が喪失する場合。
被相続人に対する虐待または重大な侮辱がある場合や、その他著しい非行がある場合に、その相続人の遺留分を含めた一切の相続権を奪うことができます。
3.相続放棄
相続人が自ら相続権を放棄した場合。
被相続人の財産が債務のみ残るような場合は相続放棄が選択されます。
相続人不存在の確定の手続き
法定相続人がいない場合の遺産は、相続財産管理人が管理することになりますが、相続財産管理人を選任するためには、利害関係者や、検察官が家庭裁判所に対して選任の申立てを行う必要があります。
利害関係者とは、お金を貸している債権者や、遺言により遺産を受け取ることができる人や、被相続人の内縁の妻などの特別縁故者をさします。
相続財産管理人が選任されたことが公告され、公告後2か月を経過しても相続人が現れなければ、相続財産管理人が債権者や受遺者などの利害関係者に対して債権の申し出を行うよう公告されます。債権者や受遺者が要る場合は、遺産から精算されます。
精算手続きと並行して、さらに6か月以上の期間を定めて相続人捜索の公告を行い、相続人不存在が確定します。
特別縁故者への財産分与
特別縁故者とは、被相続人に法定相続人がいない場合に、一定の条件を満たせば、裁判所に請求することで財産を受け取れる人のことです。
特別縁故者になる条件は、以下のいずれかに該当していることです。
①被相続人と生計を同じくしていた人
②被相続人の療養看護に務めた人
③その他被相続人と特別な縁故があった人
特別縁故者として遺産を受け取るためには、特別縁故者の申立てを家庭裁判所に行い、裁判所に特別縁故者と認められる必要があります。
遺言の検討
相続人も特別縁故者もいない場合は、遺産は最終的に国に帰属することになります。
財産を渡したい人がいる場合などは、遺言書を作成しておくべきです。
被相続人は、遺言書において、法定相続人ではない第三者や、団体に対し、遺産を遺贈することができます。
なお、直筆証書遺言は、形式の不備により無効となる可能性も高く、また作成しても見つけてもらえない可能性があるため、公証役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言を作成しておくことをおすすめいたします。