遺留分を主張しても無視されました。どのように請求すればよいですか?
回答
遺言や贈与によって相続人の遺留分を侵害された場合に、その遺留分権利者である相続人が、侵害者に対して、その侵害額に相当する金銭の支払いを請求することを遺留分侵害額請求といいます。
遺留分侵害額請求は、法律上拒否することができません。
当事者間で話し合いがまとまらない場合は、裁判所に調停を申し立てます。調停でも解決できない場合は、訴訟を提起することになります。
遺留分侵害額請求の方法
♦内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思表示を行う
遺留分侵害額請求は、相続開始と遺言または贈与があったことを知った日から1年以内に行う必要があります。
そのため、口頭など証拠が残らない方法ではなく、内容証明郵便を利用して、遺留分侵害額請求の意思を明示しておく必要があります。また、内容証明郵便に配達証明を付けることで、書面がいつ相手方に届いたかを証明することもできます。
このように証拠を残すことで、後日、「遺留分の請求は受けていない」など主張され、トラブルになることを防ぎます。
♦相手方との協議
裁判所を介さずに、直接当事者同士により示談交渉する方法です。
裁判所が関与しないため、専門的な知識や経験が必要となります。示談交渉の場合は、弁護士に相談し、相手方との交渉を委任することをお勧めいたします。
遺留分侵害額の支払いについて合意が得られた場合は、合意書を作成します。なお、分割払いなどにする場合は、公正証書にしておくことをお勧めいたします。
♦家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申し立てる
協議で遺留分侵害額の支払いについて合意に至らなかった場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額請求調停を申し立てます。
裁判所の調停委員が当事者の間に入って調整し、話し合いにより解決する方法です。当事者間で話し合うよりまとまりやすくなります。
調停手続きは長期間を要することも多く、精神的な負担や時間と労力を必要としますので、弁護士に依頼し、調停の進行を委任されることをお勧めいたします。
♦遺留分侵害額請求訴訟を提起する
調停においても、遺留分侵害額の支払いに合意できない場合は、調停不成立となります。その場合は、地方裁判所または簡易裁判所に訴訟を提起することになります。
裁判においては、遺留分が侵害されていること、遺留分侵害額が明らかになれば、裁判官が判決という形で支払いを命じてくれます。
遺留分侵害額請求権の時効と除斥期間
遺留分侵害額請求には期限があるので注意が必要です。
♦時効
相続開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年です。
期間が経過すると、遺留分侵害額請求件は消滅します。
♦除斥期間
遺留分侵害額請求の除斥期間は、相続開始後10年間です。
除斥期間は、10年経過すると当然に権利が失われます。被相続人が亡くなってから10年経過すると、遺留分権利者が、被相続人が亡くなったことや、遺留分を侵害されていることを知らなくても、個別事情は関係なく遺留分侵害額請求権は消滅します。