相続人のなかに認知症の方がいますが、どのように遺産分割協議を進めればよいですか?
回答
遺言書がない場合は、相続人全員が参加する遺産分割協議によって、遺産をどのように分けるか決めなければなりません。
認知症などで判断能力が不十分な方が相続人にいる場合は、遺産分割協議に参加することはできないので、遺産分割協議が進められません。認知症の方本人も含めて遺産分割協議をしたとしても、全て無効となります。
遺産分割協議を進めるためには、認知症などで判断能力が不十分な相続人に代理人を立てる必要があります。成年後見人を選任し、本人に代わって遺産分割協議に参加してもらいます。
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な方を保護し支援する制度であり、法定後見人制度と任意後見制度があります。
♦法定後見制度
法定後見制度は、すでに判断能力が不十分である場合に家族などが家庭裁判所に申し立てをし、利用できる制度です。本人の判断能力の程度に応じて「補助」「保佐」「後見」から選択されます。どの後見が必要であるか、家庭裁判所が判断します。
1.補助人:判断能力が不十分である人のため、特定の法律行為を代理することができる。
2.保佐人:判断能力が著しく不十分である人のため、重要な法律行為を代理することができる。
3.後見人:常に判断能力を欠く状況にある人のため、あらゆる法律行為を代理することができる。
♦任意後見制度
任意後見制度は、本人の意思能力が健全であるうちに、あらかじめ後見人になってもらいたい人と任意後見契約を締結し、判断能力が低下した場合に備えておく制度です。
本人の判断能力が低下した際は、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらう必要があります。
成年後見人選任の手続き
認知症などの方本人やその親族などが、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に成年後見人の選任の申立てを行います。
申立書や財産目録、収支予定表、医師の診断書などの必要書類を提出したうえで、裁判所による調査や事情の聞き取りなどを経て、裁判所の審判により成年後見人が選任されます。
申し立ての際に、成年後見人の候補者を指定することができますが、必ずしもその候補者が選任されるわけではなく、裁判所の判断により弁護士などの専門家が選任されることがあります。
遺言がある場合は成年後見人の選任は不要
相続人のなかに、認知症など判断能力が不十分な方がいる場合は、遺言書で遺産分割方法を指定していれば、相続人らは遺言書のとおり遺産を分けることになるので、遺産分割協議が必要ありません。そのため、認知症の方に後見人をつける必要もありません。
ただし、遺留分を侵害する内容にならにように、また無効にならないように注意して遺言書を作成する必要があります。